岡山県の備前焼(びぜんやき)とは?特徴や歴史、有名作家を現地観光レポートと共に解説

岡山県の焼き物「備前焼」をご紹介します。

備前焼は何県の陶器かご存知でしょうか。

備前焼は岡山県で古くから生産されている焼き物で、現在ではマグカップや湯のみなど生活雑貨として全国的に有名です。

本記事では、岡山県の焼き物である「備前焼」について、特徴や種類、歴史、有名作家、そして備前焼の里観光の様子をご紹介しています。

以下のような方にお勧めの記事です。

  • 器や陶磁器について興味がある人
  • 備前焼の特徴や歴史を知りたい人
  • 岡山県に旅行を考えられている人

備前焼とは? 

備前焼(びぜんやき)とは、岡山県備前市の伊部エリアでとれた良質の陶土で焼かれた陶器です。手び練りで一点づつ成形し、絵付けもせず、釉薬もコーティングせず、そのまま焼く、土味がよく表れていることが特徴の焼き物です。

言うなれば、備前焼はどれも同一のデザインはうまれず、そのまま自然が表現される”無作為の美”(むさくいのび)をもつ陶器です。

ゆえに一つ一つが似ているようで異なりますので、数ある備前焼の作品たちの中で、一番自分の美意識と相性が良いものを見つけるのが備前焼の楽しみの1つです。

自分が選んだ備前焼は、自分の美意識の現れで、自分そのものだと感じます。

ちょっと文章のはじめから興奮気味ですが、それほど備前焼というのは、奥が深く、焼き物好きにとっては、絶対行きたい窯元の産地なんです。

その奥が深いというのは、技術力や技法やデザインのレパートリーもさることながら、ダントツに歴史が深い、という部分にあります。

備前焼は、言わずと知れた「日本六古窯(にほんろっこよう)」の1つです。

備前焼の特徴とは?

備前焼の特徴は、窯変(ようへん)による器表面のデザインと、陶土本来の色合いが残る赤褐色(せきかっしょく)です。

先述したように、備前焼は陶磁器の表面を覆うガラス質のコーティング材である釉薬(ゆうやく)を使用していませんので、1000度以上の炎が、窯の中で、成形した備前焼に直接あたります。すると土の中の成分や灰が、高温すぎて融けて作品に付着し、釉薬の代わりとなります。また窯の中の炎がどうなるかはコントロールできないので焼きムラになります。これらを備前焼では窯変と呼び、デザインとして使っています。ちなみに代表的な窯変デザインのパターンとして、4つあげれます。胡麻(ごま)、桟切り(さんぎり)、緋襷(ひだすき)、ぼた餅があります。

また酸化焔で焼かれたため、赤褐色の土肌が特徴的です。原料の土は、鉄分をおおく含む田土(ひよせ)を用いるため、その分さらに赤さが目立ちます。

どれも自然の無作為の美(むさくいのび)です。

動画で見ると分かりいやすいので、備前焼の特徴がよく出ているこちらの動画をご覧ください。

ビアマグ内部は緋襷の特徴がでており、表面には松割木の灰釉が付着してできた胡麻の窯変が、そして何より全体的に赤みがかっています。

備前焼の里に行った際は、ぜひこの窯変と赤褐色の特徴を事前に覚えてから楽しんでみてください。

備前焼のビアマグは、釉薬でコーティングしたないめ、焼き締めの部分がザラザラしています。なのでビールの泡立ちがすごく、まさに”神泡”です。

気が抜けたビールでも泡立ち、ビールがより美味しく感じれますよ。

備前焼の歴史とは?

備前焼の歴史とは、古くは古代にさかのぼることになり、日本六古窯であることが特徴です。

日本六古窯(にほんろっこよう)とは、鎌倉時代以前より継続している古い窯の中で、大きな産地となった代表的な六つの窯、瀬戸(せと)・常滑(とこなめ)・越前(えちぜん)・信楽(しがらき)・丹波(たんば)・備前(びぜん)の六窯(ろくよう)を指す言葉です。

特にここ備前焼は歴史が古く、なんと日本史の教科書でもよく見かける弥生時代の須恵器(すえき)が発展したものだと言われています。

須恵器といえば、焼き締めで薄く作った土器です。

たしかに言われてみると、備前焼もその特徴をちゃんと継承しています。

備前焼の由来・語源とは?

備前焼の由来は、岡山県の古代の名称である、備前国(びぜんのくに)という国名にあります。

備前国は、かつて吉備(きび)地方と言われたこのエリアの中で分かれた国の1つです。

その備前で作られた焼き物だから備前焼と呼ばれるようになりました。

有名な備前焼の作家

備前焼の有名作家は数多くいますが、人間国宝に指定されている著名な備前焼作家をご紹介します。

金重陶陽(かなしげとうよう)

藤原 啓(ふじわらけい)

山本陶秀(やまもととうしゅう)

藤原 雄(ふじわらゆう)

伊勢崎 淳(いせざきじゅん)

備前焼の口コミやレビュー

備前焼発祥の地を観光

備前焼の里のを観光する際に中心となるのは、JR伊部駅(いべえき)です。

無人駅のような簡素なこの駅が観光の中心となりますが、備前焼を楽しみたい、窯元めぐりをしたい、という方はここを目指してこられるのが良いと思います。

伊部駅入り口には、備前焼で出来た陶板画(とうばんが)が出迎えてくれました。

この地域の神社に伝わる阿形(あぎょう)、吽形(うんぎょう)の宮獅子(みやじし)がモデルになっているとのことです。

JR伊部駅にある備前焼の陶板画
JR伊部駅にある備前焼の陶板画

シッポの先端が宝珠(ほうじゅ)のようになっていますね。

宝珠とは、災難を除き、汚れを浄化する仏宝のことです。

胴体やら頭に丸く明るい色に変色した斑点(はんてん)がそれぞれ2,3個ありますが、これが先述した「ぼた餅」という焼き方だそうです。

伊部駅の目の前には地図があります。

ここでどこに行くか決めれます。

この伊部という地域は、備前焼が弥生時代の須恵器から続いているということもあり、かなり歴史が長いです。

備前焼以外にも、かなり見ごたえのあるスポットがたくさんあるので、どこに行くか迷いました。

岡山県備前市の伊部駅のすぐ近くにある備前焼の里
岡山県備前市の伊部駅のすぐ近くにある備前焼の里

伊部駅で備前焼が買える「備前焼伝統産業会館」

JR伊部駅に併設されている備前焼のショップギャラリー
JR伊部駅に併設されている備前焼のショップギャラリー

備前焼の里に到着してまず思ったのは、駅から降り立った瞬間に、備前焼の歴史を感じれる利便性です。

伊部駅を降りるとまず目にするのが、伊部駅に併設されている「備前焼伝統産業記念館」です。

備前焼伝統産業記念館では、1階で岡山県のお土産の販売、2階では備前焼の販売や展示が行われています。

備前焼の窯元は、かなり数多く、どれを買うか迷った末、「どれも買えなかった、、、」なんてよくありがちです。

そんな時に、重宝するのがここです。

各窯元さんの作品が数多く並んでいるので、何か買い損ねたときに便利です。

まだ職員の方も常駐しているので、おすすめの焼き物や窯元の特徴なんかも教えてくれます。

備前焼伝統産業会館の詳細情報はこちらです。

  • 名称:備前焼伝統産業会館(びぜんやきでんとうさんぎょうかいかん)
  • 住所:〒705-0001 岡山県備前市伊部1657-7
  • 問い合わせ先:TEL 0869-64-1001 FAX 0869-64-1002
  • 開館日・火曜日(祝日の場合は翌日)、1・2階は12月29日~1月3日休み
  • 料金:無料
  • アクセス:赤穂線「伊部駅」下車すぐ

備前焼の歴史と特徴を知る「備前焼ミュージアム」

伊部駅から徒歩1分にある備前焼ミュージアム
伊部駅から徒歩1分にある備前焼ミュージアム

伊部駅から徒歩1分到着する、こちらの備前焼ミュージアムもおすすめです。備前焼ミュージアムでは、備前焼の歴史や特徴を、実物を展示しながら学ぶことができます。

やはり備前焼の面白さの1つは「歴史」です。

備前焼は、焼き物の中でも日本最古級の長い歴史がありますので、備前焼が誕生した古代から1000年以上の時間の中で、どのように進化してきたのか、どのような変遷があったのかを、充実した過去作品や資料を一緒にみるのならば、ここ以上のところはありません。

 備前焼ミュージアムの詳細情報はこちらです。

  • 名称:備前焼ミュージアム(びぜんやきみゅーじあむ)
  • 住所:705-0001 岡山県備前市伊部1659-6
  • 問い合わせ先:Tel: 0869-64-1400 Fax: 0869-63-8300
  • 開館時間:午前9時から午後5時( 最終入館は午後4時30分 )
  • 開館日:毎週月曜日( 祝日または振替休日の場合は翌日 )、12月29日-1月3日、そのほか展示替時
  • 最寄り駅:赤穂線「伊部駅」下車 徒歩1分

備前焼のふる里にいってみた。

「備前焼のふる里」の町並み
「備前焼のふる里」の町並み

伊部駅から徒歩5分ほど、備前焼のふる里に到着しました。

備前焼のふる里には、メインストリートがあり、この通り沿いにズラーと窯元のショップが並んでいます。

嬉しいのが、備前焼の窯元が直接ギャラリーショップを運営していることです。

窯元が備前焼ショップを直営することによって、自分が欲しい商品を製造元からダイレクトに、リーズナブルに購入することができます。

また備前焼のふる里でしか見れない風景もあります。

備前焼の窯元が、ギャラリーショップのすぐ裏手で作品を作っているので、その雰囲気を感じることができます。

こちらの窯元では、ひと際大きな耐火レンガでつくった煙突が飛び出ています。

何を焼いているのでしょうか。

備前焼の窯元の煙突
備前焼の窯元の煙突


とある窯元のギャラリーに入って、作品を見ていると何やらコーヒーや緑茶、どちらが良いか聞かれました。

まだ購入していないのに、コーヒーを頂戴しました。

これは何か買わねばいけない。(笑)

備前焼で提供される珈琲
備前焼で提供される珈琲


お店からいただいたコーヒーがはいっている器はもちろん備前焼です。

ここまで赤いのか、というほどの色です。

コーヒーをまぜるスティックまで備前焼なのは、こだわりがあっていいですね。

自分の家でも、このように自分がいままで集めた雑貨や器を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごしたいものですね。


備前焼のふる里は、日本六古窯(にほんろっこよう)なだけあって、歴史を感じる通りです。

昔ながらの立派な日本家屋がそこかしこに立っています。

備前焼窯元本家「興楽園」と町並み
備前焼窯元本家「興楽園」と町並み

これは、同じ通りにあった茅葺屋根(かやぶきやね)の古民家。

この茅葺高いんですよね。

うちの実家も以前は茅葺だったのですが、高すぎて変えました。

備前焼のふる里にあった茅葺屋根の家。
備前焼のふる里にあった茅葺屋根の家。

備前焼の旅で購入したもの

カニが模られた備前焼の盃を購入。
カニが模られた備前焼の盃を購入。

今回、岡山県の備前焼の里にて購入したのは、”横這いする可愛いカニさん付きの盃”です。

盃の底部分には桟切りのようなグレーの色や、赤褐色もサークル状に、にじみ出ていて、備前焼らしくて好きになりました。

カニは後ずさりせず、横這いで前進するので、”常に前進する”という言葉にもかかる縁起物です。

お酒を実際に入れてみると、なんとカニの部分からプクプクと泡が出てきます。

まるで生きているみたい。

お祝いの席や、仲の良い友達と飲むときに使うのも良いですね。

f:id:yokusen:20200503071145p:plain
カニが模られた備前焼の盃の表面

備前焼の特徴や歴史をさらに学べる施設を紹介

こちらで備前焼に興味を持たれた方には、もっと備前焼について学べるスポットをご紹介します。

備前市歴史民俗資料館

備前市歴史民俗資料館は、郷土の歴史・民俗・文化について、常設展示と企画展でそれぞれテーマにそった展示を行っています。

民俗室は、昔の人が生活に使っていた道具(行灯やランプ、石臼など) を展示して、人々がどのような暮らしをしていたかを紹介しており、セラミックス室では、備前焼を焼く登窯の断面模型や備前市内から出土した遺物や備前焼、備前市の産業を支えた耐火レンガなどを展示しています。

備前市歴史民俗資料館の基本情報はこちらです。

  • 住所:〒705-0022 岡山県備前市東片上385
  • 開館時間 9:00~16:30(毎週月曜定休)
  • 拝観料:無料
  • 問合せ先:086-964-4428
  • アクセス:JR備前片上駅から徒歩で5分

備前焼のふる里おすすめスポット「天津神社」

ここ備前焼の郷でしか見られない景色をご紹介します。

備前焼でできた天津神社です。

千年の歴史をもつ由緒ある神社。屋根瓦、狛犬、参道の敷石、参道沿いの塀の陶板にも備前焼が使用されています。備前焼の絵馬も販売されています。

備前焼の狛犬が出迎えてくれる天津神社
備前焼の狛犬が出迎えてくれる天津神社

参門もすごいです。

屋根瓦も、シャチホコも、壁も全部備前焼です。

岡山県にある備前焼の神社「天津神社」
岡山県にある備前焼の神社「天津神社」



神社の塀には備前焼の瓦と烏帽子をかぶった十二支の申(申)がいます。

奥の家屋の瓦と比べても、備前焼の赤褐色が際立ちます。

備前焼の瓦

備前焼の瓦

また陶板で狛犬の画とタイルがあります。

どこまでも備前焼尽くしですね。

備前焼陶板の彫刻

備前焼陶板の彫刻

以上になります。

天津神社(あまつじんじゃ)の詳細情報はこちらです。

  • 住所:〒705-0001 岡山県備前市伊部629
  • 問い合わせ先:0869-64-2738(天津神社)
  • 最寄り駅:JR伊部駅から徒歩10分

おすすめの関連記事をご紹介

ご覧いただきありがとうございます。

さらに日本全国の焼き物に興味を持たれた方におすすめの記事をご紹介します。日本の焼き物の種類や産地を一覧にしてまとめてみました。ぜひ一度ご覧ください。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。