沖縄県のやちむん焼とは?壺屋焼との違い、人気作家や沖縄の焼き物の特徴・歴史を解説
「やちむん焼」について特徴や歴史、壺屋焼との違いをご紹介
やちむん 7寸皿 大皿こちらの記事では、沖縄県の陶器・焼き物である「やちむん焼」について特徴や歴史について、まとめております。
みなさんは”やちむん”ってワードを見たこと、聞いたことはありますか。
沖縄に行った人は、なんとなく那覇空港やお土産屋さんで見たことがあるかもしれません。
やちむんとは、沖縄を代表する工芸品でして、そのデザインや愛くるしいフォルム。一度お気に入りの作品をみると買うまで離れられなくなります。
粘度で焼き上げる陶器ですが、茶道・煎茶道の茶碗や華道でも使えるような花器、日常でも使用できる酒器や和菓子の皿などレパートリーも多いので、ここを見逃すわけにはいけません。今回はそんなやちむん焼・壺屋焼をご紹介します。
やちむん焼とは
やちむん焼とは、沖縄県で古来より生産される陶器です。やちむん焼は、厚めの素地に釉薬を付けて焼成するため、どっしりとした雰囲気の焼き物になります。別名として壺屋焼(つぼややき)や、読谷焼(よみたんやき)とも称されます。
やちむん焼(壺屋焼)と分かりにくい表記をされることがありますが、やちむん焼の語源・由来は「焼き=やち」「もの=むん」という音の変化にあります。
つまり沖縄県の方言で焼き物全般のことを表しています。
沖縄県には、読谷村や壺屋焼通りなど焼き物エリアがあるので、その総称であり、壺屋焼は沖縄を代表する焼き物の名称であるため、このような表現を使わさせていただきます。
やちむん焼と壺屋焼の違い
やちむん焼と壺屋焼は、ほぼ同じ意味です。
上述したように、”やちむん”とは「焼き物」という意味で、壺屋焼は沖縄の焼き物の種類の1つなので、その意味では「壷屋焼=やちむん」です。
王朝時代、国中の有名な陶芸家を一箇所に集めたところが現在の「壷屋」という地域です。その壷屋で焼かれた焼き物が「壷屋焼」となります。
やちむん焼の特徴とは
やちむん焼(壺屋焼)の焼き方は2種類あり、上焼(じょうやち)と荒焼(あらやち)に分かれます。
上焼は,赤土の素焼きの粘土に白土で化粧がけをしたり、釉薬をかけた皿やお碗などにつかわれる名称です。釉薬とは、つまりはガラスコーティングですので、水漏れがしにくく、汚れがつきにくいため、酒器や花器など日用品によく使われます。
荒焼は釉薬をかけずに焼き締めで行うもので、水甕や酒甕につかわれることが多いです。荒焼の見た目の例としてこちらの動画をご覧ください。琉球瓦(りゅうきゅうかわら)のオレンジ色をイメージした、シーサーが描かれたやちむん焼コースターです。
バドワイザーのカンカンを置いているのですが、水分の吸収がはやく重宝しています。
珪藻土より使い勝手がよく、沖縄の赤土の特色がよくでており、愛着がわく一品です。
やちむん焼の歴史とは
沖縄県の焼き物の歴史は、沖縄本島の地理的条件が派生していると言われています。
今一度こちらで沖縄諸島の地理的状況をご確認ください。
東シナ海に面しており、台湾や中国の国名が見えます。
つまりユーラシア大陸や台湾、東南アジアと日本の中間にあります。
沖縄は古くから様々な国の文化や慣習を取り入れて進化してきた歴史をもっています。
沖縄本島では古くは6000年以上前の土器が見るかっており、生活雑器や日用品は、自分たちのエリアで材料がまかなえていました。やがて15世紀には朝鮮、タイ、ベトナム、日本から陶磁器を輸入するようになりました。かつては沖縄本島でよく見られる”城(ぐすぐ)”の瓦などをメインの使用用途であった沖縄の焼物も、こうした海上貿易などの影響を受けることで、焼物としての質が高まり技術の向上につながっていったといわれています。
また江戸時代初期には、九州を中心に活躍していた朝鮮人陶工が、薩摩経由で沖縄に渡ってきました。中国の官窯もあった朝鮮国の高い技術力を吸収し、さらには1682年に琉球王朝が工芸産業振興制作の一環として、沖縄全土に点在していた有名な窯を、”壺屋通り”に集め、そこから”壺屋焼”と呼ばれ、沖縄の焼き物はさらに技術力を高め発展していきました。
しかし明治維新後には西洋の大量生産・大量商品の流れが沖縄にも押し寄せ、安い陶磁器の登場にやちむん焼(壺屋焼)もピンチを迎えました。危機を迎えたやちむん焼(壺屋焼)でしたが、日本本土でおこった”民芸運動”の影響もあり、やちむん焼の”実用の美”という部分にスポットライトがあたり、益子焼の濱田庄司(はまだしょうじ)、京都の河井寛次郎(かわいかんじろう)などが相次いで来県、民芸窯の特徴も加わり、やちむん焼の人間国宝になった金城次郎などの優秀な職人が生まれるまでになりました。
やちむん焼の人気作家
沖縄県には各地にやちむん焼の窯元がありますが、その中でも人気作家・窯元をご紹介します。
宮城陶器
「宮城陶器」は、2013年ごろに陶芸家の宮城正幸氏がオープンした窯元ギャラリーです。個性的でオリジナリティーの高いデザインと色使いは、他にはない沖縄だけの焼き物という感じ。かわいいなデザインから、シンプルで現代的なおしゃれ器まで幅広く製作されています。
- 所在地: 〒901-1400 沖縄県南城市佐敷屋比久328
- 電話: 098-917-1623
やちむん焼の感想やレビュー
やちむん焼のにレビューを見ると、全国的に人気が出ているようです。
TwitterやGooglemapの口コミでも高い評価を得ています。
“唐草の器が気に入って沖縄に行く度に購入しています。”
Googlemap口コミ
やちむん焼(壺屋焼)がうまれた沖縄へ行ってみた。
那覇国際空港に降り立ち、レンタカーで近くの海によると、沖縄が日本ではないかのような異国情緒な雰囲気を感じます。
まずはこちらの海の画像をご覧ください。
恐ろしいほどの透明度の高さ、そして沖に行くにつれ、エメラルドグリーンの色合いになっていきます。
これは沖縄の地理的特徴である”琉球石灰岩”(りゅうきゅうせっかいがん)が理由です。
琉球石灰岩とは、ようはサンゴ礁が石化したもので、白に近い灰色のような色合いです。じつに沖縄県の30%がこの琉球石灰岩だと言われており、深いところだと150メートルの深さまで、その石灰岩の地層のエリアもエリアもあります。
太陽光が海に差し込むと、この白い石灰岩が粉砕されたできた砂浜が反射し、このような美しい海を形成するのです。
この琉球石灰岩は、やちむん焼にも影響を与えています。この石灰岩の地層を発見し、赤土の粘土でしか作れなかったやちむん焼の表面に琉球石灰岩を白土としてまぶすことにより、”絵付け”ができるようになったのです。
自然の力はすごいですね。
沖縄の人気観光地「やちむんの里」へ
「やちむんの里」とは、読谷村にある沖縄家屋が連なる趣のある集落です。それぞれ”独立して営業”している 19の工房が集まるエリアで、人間国宝となった金城次郎氏の北窯をはじめ、はじめての方でもやちむん焼を楽しめる様々なお店が集まっています。
こちらの画像は、ここやちむんの里の共同登り窯です。
赤土の瓦屋根で覆われて家屋のように見えますが、じつは何段にも上に連なる巨大な登り窯です。
岡山県の備前焼(びぜんやき)や常滑焼(とこなめやき)など、有名な窯場には必ずこれほどの大きな登り窯があります。
那覇空港に到着し、南方植物やエメラルドグリーンの海ばかり見てきて、エスニックな雰囲気漂う沖縄ですが、この登り窯をみて、やはりここは日本だと再確認しました。
やちむん焼をみるならここ「壺屋やちむん通り」
ここ「壺屋やちむん通り」は、沖縄国際通りからすぐの場所にある、とくに”壺屋焼”(つぼややき)といわれる”やちむん”の窯元や販売店、工房が軒を連ねて並ぶ通りです。赤土の瓦屋根の木造家屋もおおく、昔ながらの面影を残す観光スポットです。
にぎやかな国際通りとはうって変わって、ゆるりとした時間が流れるノスタルジックな雰囲気です。
それもそのはず、先述したように、ここはかつての沖縄で一番発展していた焼き物の里です。
かつての琉球王朝の行政施策で沖縄全土に点在していた窯元がここ”壺屋通り”にあつめられ、焼き物をつくり、中でも真水が貴重な沖縄で需要の多かった水甕や壺を生産することが多かったため、この”壺屋”という名前が付けられたとか(諸説あり)です。
那覇市立壺屋焼博物館
やちむん 読谷山焼北窯 ドットマグカップこちらも国際通りからほど近く、古くから沖縄の陶業の中心地として栄えた壺屋の地に建設されたヤチムン(焼物)の博物館です。 沖縄・壺屋の焼物(やちむん)に関する資料を収集保管するほか、技術的に関連の深いアジア諸国の焼物なども併せて展示しています。
那覇市立壺屋焼博物館の基本情報
那覇市立壺屋焼博物館の営業時間や問合せ、アクセスをご紹介します。
- 住所:〒902-0065 沖縄県那覇市壺屋1丁目9−32
- 問合せ先:098-862-3761
- 営業時間:10時~18時(毎週月曜定休)
- アクセス:自動車で那覇空港から約20分程度、ゆいれーる牧市駅から徒歩約10分
やちむん焼買うならここ!
やちむん焼は民芸品です。民芸品とは”民衆的工芸”の略称ですが、ようは民間で生み出された芸術品です。しかし展示して眺めて楽しむのではなく、”使って楽しむ=実用の美”が民芸品の本質です。
やちむん焼は、ぜひ使って楽しんでください。日常でつかうことにより、質感や重さ、フォルムや意匠の意味、作者からのメッセージに気づき、より愛着が湧きます。
わたしがおすすめする、やちむん焼のショップをご紹介します。
壺屋陶芸センター
壺屋通りに面する、壺屋町民会自治会が経営するお店です。壺屋に点在する20以上の窯元の作品を一堂に集め、展示・販売しています。各窯元の作風をチェックする場所として最適で、お気に入りの作品を見つけたら、ぜひ窯元さんも訪問してみてください。
壺屋陶芸センターの基本情報
壺屋陶芸センターの営業時間やアクセス、電話番号をご紹介します。
- 住所:〒902-0065 沖縄県那覇市壺屋1丁目9−1
- 問合せ先:098-863-2298
- 営業時間:10:00~18:30(10~翌3月は~18:00)※毎週水曜定休
- アクセス:自動車で那覇空港から約20分程度、ゆいれーる牧市駅から徒歩約10分
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やちむん焼の記事はいかがでしたでしょうか。
さらに日本全国の焼き物に興味を持たれた方におすすめの記事をご紹介します。日本の焼き物の種類や産地を一覧にしてまとめてみました。ぜひ一度ご覧ください。
投稿者プロフィール
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宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。
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