煎茶道具「宝瓶(ほうひん)」

煎茶道具「宝瓶(ほうひん)」とは、急須(きゅうす)と同じく、茶を淹れる器物のことです。

ふた付きの平口で、上部が広く底辺が比較的狭い形状をしており、蓋は胴張り形のものが多いです。

別名として「泡瓶(ほうひん)」と書かれることもあります。

実際に、京都の有名な職人さんによって、こんな感じで販売されています。

煎茶道具「宝瓶」(ほうひん)の素材や形について

煎茶道具「宝瓶」と急須との大きな違いは、取手が無いことです。

素材は陶磁器(とうじき)がほとんどです。

宝瓶は、茶葉を器に入れたまま飲む際に使われる蓋碗(がいわん)が原型だと言われています。(諸説あり)

泡瓶の内側には、注ぎ口が蓋底まで空いており、取手がないため、ぬるめの湯で入れる玉露手前の際に重宝されます。

茶漉し穴がない代わりに、茶葉がこぼれないように蓋を少しずらして注ぎます。

器の表面には各作家によってさまざまな意匠(いしょう)がデザインされることが多く、お茶会ごとに同じ柄の泡瓶を見ることはありません。それではここでいくつか泡瓶の画像をご覧ください。

奈良県の伝統工芸「赤膚焼」の宝瓶(ほうひん)

煎茶道具「宝瓶」で有名な赤膚焼(あかはだやき)は、奈良県の伝統工芸品です。

奈良県内にある赤膚焼の窯元(かまもと)は、小堀遠州(こぼりえんしゅう)が好んだ遠州七窯(えんしゅうしちがま)のひとつに数えられる茶道具の産地です。

赤膚焼の粘土が産出する赤膚山は、平城京(へいじょうきょう)の南西部に位置し、”青丹よし”(あおによし)の詞どおり古来より良質の陶土が産する所です。この良土と天平の昔からの歴史的、文化的風土に育まれた陶器が赤膚焼です。

現在は赤膚焼の窯元も数軒を数えるようになりましたが、その中で煎茶道具も制作されていることにぜひご注目ください。

赤膚焼の表面には、「奈良絵」(ならえ)というお釈迦様の生涯を描いた「過去現在因果経」(かこげんざいいんがきょう)をデザインにした意匠が描かれており、写真にある煎茶道具の赤膚焼の泡瓶は、注ぎ口が狭く絞ってあり、雫がつたって底辺まで落ちないよう工夫されています。

兵庫県の工芸品「出石焼」の泡瓶(ほうひん)

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。