「みちのくせんべい」との出会い

私が和菓子に惹かれたのは、幼少期のことでした。家族がよく買ってきてくれる団子やまんじゅう、季節の和菓子を楽しみながら、その繊細な味わいと見た目の美しさに心を奪われました。しかし、私の中で特別な存在となった和菓子が「みちのくせんべい」でした。この宮城県仙台市にある老舗和菓子屋「売茶翁」で売られている一枚のせんべいが、私の心に深く刻まれることになったのです。

仙台の和菓子屋「売茶翁」のみちのくせんべい

仙台の和菓子屋「売茶翁」のみちのくせんべい

みちのくせんべいとの出会い

初めて「みちのくせんべい」と出会ったのは、筆者が大学生になり仙台を訪れたときのことでした。地元の友人が、「仙台に来たなら、絶対にこれを食べてみて」と薦めてくれたのがこのせんべいでした。正直なところ、せんべいと聞いて最初は少し驚きました。せんべいといえば、私の中では硬くて香ばしいものというイメージがあり、甘さや繊細さとは縁遠い存在でした。

しかし、売茶翁の店先で手に取った「みちのくせんべい」は、そんな私の予想を大きく裏切りました。シンプルながらも美しい包装に包まれたせんべいは、職人の手によって一枚一枚丁寧に焼き上げられていることが感じられ、その香ばしい香りが漂っていました。

みちのくせんべいの魅力

初めて「みちのくせんべい」を口にした瞬間、その絶妙な食感と風味に驚かされました。せんべいはパリッとした歯ごたえとともに、口の中で広がるほのかな甘みが絶妙でした。特に、ほんのりとした塩気が甘さを引き立て、飽きのこない味わいが魅力的です。素材の持つ自然な甘さを活かしつつ、余計な添加物を使わないシンプルさが、まさに職人の技の結晶であることを実感しました。

また、「みちのくせんべい」には、どこか懐かしさを感じさせる味わいがあります。子供の頃に食べた祖母の手作りのお菓子を思い出させるような、優しくて温かみのある味です。この一枚のせんべいが、私の記憶の中にある懐かしい風景や、家族との団らんを呼び覚ましてくれるのです。

和菓子に対する思い

私が「みちのくせんべい」に魅了された理由の一つは、その「シンプルさ」にあります。和菓子の中でも、特にこのせんべいは、材料や製法に余計な手を加えず、素材そのものの良さを引き出すことに専念しています。その結果、食べる人それぞれが、自分の経験や思い出と結びつけながら、味わいを楽しむことができるのです。

和菓子が持つこの力こそが、私が和菓子を愛する理由です。どんなに時代が変わっても、和菓子はその時代ごとの人々の生活や心を映し出し続けてきました。「みちのくせんべい」もまた、そんな和菓子の一つとして、私たちに寄り添い、心を癒してくれる存在です。

みちのくせんべいの思い出

仙台を訪れるたびに、私は必ず売茶翁を訪れ、「みちのくせんべい」を買い求めます。家族や友人へのお土産としてももちろんですが、私自身のためにも数枚購入し、その味わいを家で楽しむのが恒例になりました。忙しい日常の中で、このせんべいを手に取ると、心がふっと軽くなるのを感じます。煎茶と一緒にいただくと、その時間が特別なものになります。

そして、何度食べても飽きることのないその味わいに、毎回新たな感動を覚えます。和菓子の奥深さと、日本の伝統文化の豊かさを感じる瞬間です。私にとって「みちのくせんべい」は、ただの食べ物以上の存在であり、心の癒しと、日本の風土が生んだ宝物の一つなのです。

これからも、「みちのくせんべい」は私の生活の中で、大切な存在であり続けるでしょう。季節が移り変わるたびに、その味わいを楽しみながら、日本の文化と風土の美しさを感じ続けたいと思います。