仙台市青葉区春日町の老舗和菓子屋「売茶翁」と仙台市民の女性Bさん

仙台市出身のBさんは、京都の大学を卒業した後、福岡へ移り住みました。大学時代から書道をたしなんでおり、福岡でもその腕を磨き続け、地元の書道教室で教えるほどの技量を持つようになりました。仕事と書道の両方に情熱を注いでいた彼女にとって、福岡での生活は充実したものでした。そして、そこで出会った大恋愛もまた、彼女の人生を彩る重要な出来事でした。

しかし、2023年、彼女は生まれ育った仙台に戻る決断をしました。その理由は、両親の介護という現実的なものでした。福岡での幸せな日々を手放すのは決して簡単ではありませんでしたが、Bさんは家族を大切にする気持ちを最優先に考えました。

再び仙台に戻ったBさんを温かく迎え入れてくれたのは、幼少期から慣れ親しんだ風景や人々、そして仙台の老舗和菓子屋「売茶翁でした。この和菓子屋は、彼女にとってただの甘味処ではなく、心の拠り所とも言える存在です。特に、子供の頃から大好きだった「みちのくせんべい」は、彼女の思い出の中で輝いていました。

みちのくせんべいは、米粉と砂糖で作られた素朴なお菓子で、Bさんはそのシンプルな味わいが心にしみると感じていました。彼女にとって、このせんべいは幼少期の無邪気な日々を思い出させてくれるものであり、また、仙台の自然や風土を感じさせる味でもありました。特に、書道教室で先生からもらったみちのくせんべいは、彼女が一筆一筆に集中する前のひとときの安らぎを与えてくれるものでした。

福岡での生活が終わり、仙台に戻ってきたBさんは、再び「売茶翁」のみちのくせんべいを味わうことができることに喜びを感じました。仙台に戻ってからも、彼女は書道を続けており、その生きがいとなる趣味を通じて新たな仲間とも出会いました。仙台に遊びに来た趣味仲間に、仙台土産として「売茶翁」のみちのくせんべいを勧めるのが、彼女にとっての楽しみの一つでした。彼らもまた、その素朴な味わいに感動し、Bさんの仙台への愛情を共感してくれました。

現在、Bさんは高齢の両親と一緒に暮らし、彼らと共に「売茶翁」の生菓子を楽しむのが日課となっています。彼女にとって、これらの和菓子は単なるおやつではなく、家族との絆を深める大切な時間を共有するためのものです。両親とともに味わう生菓子は、口の中でとろけるような食感と上品な甘さが特徴で、そのひと口ごとに家族の温かさを感じることができます。

彼女が語るところによると、両親も「売茶翁」の和菓子を非常に気に入っており、特に季節ごとに変わる生菓子には毎回心を奪われるそうです。春には桜の香りが漂う「桜餅」、夏には涼を感じる「水無月」、秋には色とりどりの紅葉を思わせる「もみじ饅頭」、そして冬には雪景色を模した「雪見大福」など、四季折々の味わいが彼女たちの生活を彩っています。

Bさんは、再び仙台での生活を始めたことで、幼い頃から愛してやまなかった「売茶翁」との繋がりを取り戻し、改めてその味わい深さと文化的価値を感じることができました。和菓子を通じて、彼女は日本の伝統や四季の移ろいを肌で感じながら、家族との時間を大切に過ごしています。

これからもBさんは、書道を生きがいに、そして家族や友人と共に「売茶翁」の和菓子を楽しみながら、仙台での新たな日々を紡いでいくことでしょう。福岡での思い出を胸に抱きながら、彼女は仙台の地で再び自分の居場所を見つけたのです。