奈良県の赤膚焼とは?由来や特徴、窯元をご紹介

奈良県の赤膚焼、魅力や窯元をご紹介

赤膚焼(奈良県) 正人窯 酒器

こちらの記事では、奈良県の伝統工芸品である「赤膚焼(あかはだやき)」の特徴や歴史、由来についてまとめました。

本記事では、赤膚焼の窯元を訪れての現地レポートや、赤膚焼の特徴の1つである奈良絵についてもご紹介します。

以下のような方におすすめしたい記事です。

  • 奈良在住の方
  • 器や陶磁器、丁寧な暮らしにをされている方
  • 焼き物好きな方

赤膚焼とは

赤膚焼とは

赤膚焼とは、奈良県奈良市と大和郡山市を中心に生産される陶器です

16世紀後半から現在に続く歴史ある焼き物で、滑らかな陶器に奈良絵と呼ばれる素朴で美しい絵柄が入るの魅力です。

読み方は「あかはだやき」と言います。

奈良県を代表する工芸品で、茶道華道をたしなむ人から人気を博しており、奈良市にある赤膚山の麓には、いまも伝統的な赤膚焼の窯元が数軒残っています。

参考:赤膚焼 奈良県公式ホームページ 

赤膚焼の特徴と魅力

赤膚焼の特徴とは、赤味のある陶土と乳白色の釉薬、加えて表面に描かれている文様の”奈良絵”が挙げられます。

赤膚焼に使われる陶土には、鉄分が多くふくまれる赤土色の赤膚山(あかはだやま)の土を焼成し、乳白色の釉薬をたっぷりかけるのが有名です。

また奈良のお寺に伝わった巻物に描かれている絵柄を、文様のように奈良絵として器の表面に描くことが多く、その可愛らしい魅力的なデザインは全国的にも有名です。

赤膚焼の由来とは

赤膚焼の由来は、赤膚焼の陶土が採取される、奈良市の赤膚山に由来するといわれています。赤膚山の周辺に窯を開いたことから、山の名をとって赤膚焼となったそうです。

赤膚焼の歴史とは

赤膚焼・仲秋の絵茶碗

赤膚焼の歴史は古く、古代から始まっています。創始は不祥ですが、どうも古代に埴輪や土器をつくっていた時代までさかのぼることができるようです。

奈良と言えば、万葉集によくでる「青丹よし(あおによし)」という枕詞(まくらことば)が有名ですが、土器にかける釉薬の青丹(あおに)※がよく採掘できたのが、この赤膚山周辺だったそうです。

※青丹とは、顔料となる岩緑青(いわろくしょう)を表わす古名

その後、豊臣秀吉の弟である豊臣秀長(とよとみひでなが)が奈良県の大和郡山城の城主として奈良には入城し、茶の湯文化が一気に発展しました。秀長が愛知県の焼き物の産地である常滑エリアから陶工・与九郎を呼んで窯場を開かせると、赤膚焼の技術は一気にあがり、利休七哲の一人である小堀遠州の七窯に数えられるまでになりました。

1800年頃大和郡山藩主柳沢尭山(やなぎさわやすみつ)が瀬戸(せと)や京都から陶工を招き、奈良市・五条山(赤膚山)に開窯して以来本格化したと考えられています。 赤膚焼中興の祖と呼ばれるのが陶工・奥田木白(おくだもくはく)です。奥田家は郡山藩の御用小間物商「柏屋」として問屋をおこなっておりましたが、木白は趣味で茶の湯を嗜んでおり、楽焼も自分で制作していたそうです。

その後に家業を引退し、陶工となった木白は、現在の赤膚焼の特徴の1つである、器の表面に”奈良絵”を描くという技法を生み出しました。

赤膚焼の文様である奈良絵とは?

奈良絵が描かれた陶磁器は、古くから赤膚独自のデザインとして多くの茶人等に愛用されてきました。室町時代の末期頃から江戸時代にかけて作られた、横本形式の絵草紙(えぞうし:江戸時代に発刊された絵入りの娯楽本)「奈良絵本」(ならえほん)に由来する絵を”奈良絵といいます。

シンプルでどこかコミカルでかわいい奈良絵のモチーフとされているのは、過去現在因果経(釈迦の前世の生涯から現世に生まれて仏陀となり、数多の弟子達に悟りの道を説くに至る一種の釈迦伝)です。過去現在因果経の教えを絵で説明したものを赤膚の器等に合うよう図案化されたものが現在の奈良絵で、東大寺や法隆寺など、古くから仏教が盛んな奈良県らしい伝統的なデザインです。

赤膚焼の奈良絵の種類とは

奈良県の焼き物「赤膚焼」(あかはだやき)

奈良絵の種類は豊富にあり、下記の表にまとめました。奈良絵には、漫画のようなコミカルな絵柄が描かれており、先述したように、過去現在因果経という経典から着想をえていたり、奈良に昔から伝わる物語が、器のまわりにデザインされていたりします。

奈良絵の種類詳細
動物奈良の鹿が描かれます。
着物を着た人が描かれます。
寺や堂人が入っているお堂が描かれます。
器の上部に色鮮やかな鳥が描かれます。
器の下部には下部には、色分けされた花が描かれます。
奈良絵の種類

ちなみに下記にわたしが購入した赤膚焼の徳利動画を添付しましので、ぜひかわいらしい奈良絵の衣装をご覧ください。

そちらに書いてある絵柄について簡単に説明させていただきます。

動物

赤膚焼の奈良絵には、神の使いである鹿が描かれています。奈良県にある世界遺産「春日大社」の御祭神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)は、鹿島神社(かしまじんじゃ)から神鹿に乗ってやってきたと伝わるため、奈良では鹿は神の使いとして古くから手厚く保護されてきました。

お堂

赤膚焼の奈良絵には、仏教の建築物であるお堂が描かれています。お釈迦様のいらっしゃったお堂や籠を絵柄にしたものだと言われています。もしくは、奈良絵のベースとなった過去現在因果経は、東大寺(とうだいじ)の正倉院御物(しょうそういんぎょぶつ)でもあるため、奈良の大仏殿を書いた説があります。数年に1度開かれる大仏殿の扉から大仏を見た姿ではと言われています。

人物

赤膚焼の奈良絵には、複数の人物が描かれています。これは、お釈迦様のお話や説法を受けに来た人だと言われています。悟りにはいった仏様のまわりには、あらゆる生物が集まり寄りそうといわれています。なのでこの人たちも、仏様のもとに集まろうとしているのではと見ることが出来ます。

赤膚焼の奈良絵には、鳥が描かれています。天界と下界を往来する瑞鳥(ずいちょう)を描いているといわれています。下記の徳利でいうと、飲み口を天界とし、その天界から瑞鳥がお花(=吉祥の象徴)を下界に持ってきているのを表しているそうです。

赤膚焼の口コミやレビュー

赤膚焼のレビュー
https://twitter.com/vress_kanon/status/1471061495023042563
赤膚焼の口コミ

赤膚焼の体験と販売をしている窯元ギャラリーをご紹介します。

ここで赤膚焼の商品を購入できる奈良県内のお店をご紹介します。

奈良には今も赤膚焼の窯元が複数あり、素敵な作品が日々生まれています。

中には赤膚焼のロクロ体験や絵付け体験を実施している窯元もあります。

以下に一般の方でも訪問可能な窯元を併記していますので、ご参照ください。

赤膚焼大塩昭山窯

大塩昭山窯(おおしおしょうざんがま)は、奈良市中町の赤膚焼の窯元で、茶道具を主に製作する窯元です。

赤膚焼の窯元は奈良市に4軒、大和郡山市に2軒あるうちのひとつで、現在で4代目とのこと。

絵付け、手びねり、ロクロ体験など、ホームページ上から気軽にお申込みいただけます。

赤膚焼大塩昭山窯の基本情報

赤膚焼大塩昭山窯の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒631-0052 奈良県奈良市中町4953
  • 問合せ先:074‐245‐0408
  • 営業時間:9時~17時30分
  • アクセス:近畿日本鉄道学園前駅からバス約10分、東坂下車、徒歩約3分

赤膚焼 大塩正人窯

大塩正人窯(おおしおまさんどがま)は、奈良市も、おなじく赤膚山で茶道具を主に製作する窯元です。

事前に問い合わせをすると、時間が合えば、現当主の大塩正巳さんやお弟子さんが、赤膚焼のこだわりについてレクチャーいただけます。

赤膚焼 大塩正人窯の基本情報

赤膚焼 大塩正人窯の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒630-8035 奈良県奈良市赤膚町1051−2
  • 営業時間:要問合せ
  • 問合せ先:TEL 0742-45-4100 FAX 0742-46-9955
  • アクセス:近鉄学園前駅南口より奈良交通バス「赤膚山」行き乗車約10分、終点「赤膚山」下車徒歩2分。近鉄西ノ京駅よりタクシー10分。

赤膚山元窯 古瀬尭三(ふるせぎょうぞう)

赤膚山元窯 古瀬尭三窯は、奈良市中町にある、最古の赤膚焼の窯元です。

古瀬尭三(ふるせぎょうぞう)氏の祖である治兵衛(じへい)が、18世紀の末頃に、京都より赤膚山五条山に入山したのが始まりです。

茶人としても高名な大和郡山藩城主 柳澤保光侯こと柳澤堯山侯の大和郡山藩御用窯として赤膚焼を再興された、現存する窯元でも最古級です。

店内では、作品の展示販売のほか、絵付け体験や手ひねり体験なども行われており、赤膚焼の魅力である土に触れることができます。

赤膚山元窯 古瀬尭三(ふるせぎょうぞう)の基本情報

赤膚山元窯 古瀬尭三の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒630-8035 奈良県奈良市赤膚町1049
  • 問合せ先:0742-45-4517 FAX 0742-45-6726  Mail:akahada@kcn.ne
  • 営業時間:9時~17時
  • アクセス:近鉄学園前(帝塚山学園)南口駅より「赤膚山」行き23、24系統約10分(10分間隔で運行)、「赤膚山」終点下車、バスが来た方向に少し戻り1つ目の信号を右折徒歩3分。

赤膚焼窯元 尾西楽斎(おにしらくさい)

JR郡山駅から徒歩すぐ、大和郡山市にある赤膚焼の窯元である、”赤膚焼窯元 尾西楽斎”に到着します。

赤膚焼は先述したとおり、仏教と深く関係した焼き物なので、こちらの窯元では、作品の一部は、奈良県の世界遺産である春日大社(かすがたいしゃ)や薬師寺(やくしじ)、東大寺(とうだいじ)などにおさめられているそうです。

春日御土器師(かすがおんどきし)の号も与えられているそうで、伝統的で奥深い赤膚焼を購入するさいに検討したい窯元さんです。

こちらの窯元でも、赤膚焼の粘土をつかったロクロの手びねり体験(3000円~)や絵付け体験(2000円~)が行われています。

赤膚焼窯元 尾西楽斎の基本情報

赤膚焼窯元 尾西楽斎の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒639-1132 奈良県大和郡山市高田町117
  • 問い合わせ先:074‐352‐3323
  • 営業時間 8:00~18:00
  • アクセス:JR郡山駅から徒歩3分、近鉄郡山駅より徒歩12分

赤膚焼の美術館や博物館をご紹介

また窯元以外にも、奈良県で赤膚焼を鑑賞、勉強できる美術館や博物館、販売店をご紹介します。

奈良国立博物館

奈良国立博物館は、日本4つ国立博物館のうちの1つです。

仏教彫刻、仏教絵画など仏教美術の名品が多数展示されており、なら仏像館では100体近くの仏像を常時展示しています。

こちらの博物館の名物企画は、ご存じの方も多いと思いますが「正倉院展」(しょうそういんてん)です。

京都より長く、1300年つづく奈良の町の至宝がご覧いただけます。

また定期的におこなわれる伝統工芸企画展では、奈良国立博物館所蔵の赤膚焼・奈良一刀彫(ならいっとうぼり)・奈良漆器(ならしっき)が多数展示されます。

奈良国立博物館の基本情報

奈良国立博物館の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒630-8213 奈良市登大路町50番地
  • 開館時間:午前9時30分から午後5時(※毎週金・土曜日は午後8時まで)
  • 休館日:毎週月曜日、12月28日~1月1日
  • 問合せ先:TEL050-5542-8600(ハローダイヤル)FAX:0742-26-7218
  • アクセス:(1)近鉄奈良駅より徒歩約15分(2)市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」下車すぐ

奈良県立美術館

奈良県立美術館は、奈良県奈良市にある美術館。 風俗史研究家・日本画家の吉川観方から寄贈された近世日本画、浮世絵、美術工芸品のコレクションを基礎に、1973年開館されました。

日本美術を中心に鎌倉時代から現代に至るまでの優品、奈良にゆかりの深い美術工芸品が展示されており、定期的に展覧会として赤膚焼の特集が組まれます。

奈良県立美術館の基本情報

奈良県立美術館の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所 〒630-8213 奈良県奈良市登大路町10−6
  • 問合せ先:0742233968
  • 開館時間:9時~17時
  • アクセス:近鉄・奈良駅/1番出口から徒歩5分. JR・奈良駅/東口バス乗り場から奈良交通バス「県庁前」下車徒歩すぐ

なら工藝館

なら工藝館は、奈良市にある市が運営する施設で、奈良県内の工芸品の展示と販売を行っています。

日本文化の源流である奈良県には、さまざまな工芸品があります。

奈良の伝統工芸品である奈良漆器(ならしっき)、一刀彫(奈良人形)、赤膚焼、奈良筆、奈良墨、奈良晒(ならさらし)、古楽面(こがくめん)、乾漆(かんしつ)、秋篠手織、鹿角細工などの展示販売をおこなっています。工芸品が発達している奈良県のアイテムが一同に揃う、翼仙おススメのスポットです。

工芸教室や工芸の実演もおこなわれておいり、伝統文化や工芸に興味のある方はハズせないショップです。

なら工藝館の基本情報

なら工藝館の住所や問い合わせ先は下記の通りです。

  • 住所:〒630-8346奈良県奈良市阿字万字町1番地の1 
  • 開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
  • 問合せ先:TEL : 0742-27-0033 FAX : 0742-27-9922
  • アクセス:近鉄奈良駅より徒歩10分、JR奈良駅より徒歩18分

焼き物・陶磁器にもっと興味がでたらおすすめしたい記事

奈良県の赤膚焼の記事はいかがでしたでしょうか。

全国的に見ても、このようなデザインで特徴が出ている窯元は珍しく、おすすめしたい焼き物の1つです。

さらに日本全国の焼き物に興味を持たれた方におすすめの記事をご紹介します。日本の焼き物の種類や産地を一覧にしてまとめてみました。ぜひ一度ご覧ください。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。