陶磁器・やきもの装飾デザイン|煎茶道具の基礎知識

陶磁器・やきものの煎茶道具についてデザインや装飾方法をご紹介します。

こんにちは。

普段皆さんが使っているコーヒーカップや湯飲み、茶碗はどのように装飾されているかご存知でしょうか。

煎茶道具や茶道具もさまざまな種類があり、とても綺麗な模様が施されていますが、そのデザインがどのようにされているのかを詳しく知っている人は少ないかもしれません。

今回は、陶磁器ややきものの基礎知識やデザイン・装飾方法について、それぞれの概要や特徴をまとめました。

ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。

「”土もの”の陶器」と「”石もの”の磁器」

やきものは、素地の材料や焼き方の違い、釉薬(素地の表面にかけて光沢を出し、ガラスコーティングの役割を果たす)の有無などによって、土器、炻器、陶器、磁器に分類されます。しかし、一般的には「陶磁器」として大きく陶器と磁器に分けられます。

陶器と磁器の大きな違いは原料です。

陶器は「土もの」と呼ばれ、吸水性のある粘土である陶土から制作されます。

磁器は「石もの」と呼ばれ、岩石を砕いた陶石という粉が主な材料で、素地は白っぽく、陶器よりも高温で焼き締められ、叩くとガラスのような音がします。

陶器(とうき)と磁器(じき)の特徴

土ものと呼ばれる陶器は、比較的厚みがあり、ザラザラした質感で、透光性がありません(素地が厚いため透けません)。指で優しく弾くと鈍い音がします。また、熱が伝わりにくく保温性があります。益子焼や相馬焼が陶器の代表例です。

石ものと呼ばれる磁器は、陶器よりも薄手で、質感は滑らかで光沢があります。九谷焼や伊万里焼が磁器の代表例です。

陶器の仲間「土器」(どき)と「炻器」(せっき)

広義に陶器の仲間として分類されるものに「土器」と「炻器」があります。

土器は縄文土器や弥生土器のように釉薬をかけずに低温で焼いたもので、素焼きのご飯茶碗や植木鉢、花器などに多く見られます。

炻器は釉薬をかけずに、土器よりも高温で焼き締めたもので、備前焼や信楽焼などが代表例です。

さらに近年では、天然原料ではなく無機質の非金属を原料とした「ファインセラミックス」も登場しています。酸化しにくく硬い、熱に強いなどの特性を活かし、工業や医療分野を中心に幅広く利用されています。

やきものづくりの工程

  1. 土づくり:採取した粘土や陶石を乾かしてから細かく砕きます。
  2. 成形
  3. 乾燥
  4. 素焼き
  5. 施釉
  6. 本焼き

技法「絵付け」装飾デザイン|煎茶道具の基礎知識

絵付けとは、やきものや陶磁器の表面に顔料や絵の具でデザインを施す技法です。ロクロや手びねりで形を整えた後、素焼きした状態で描く「下絵付け」と、素焼き後に釉薬をかけて本焼きした後に描く「上絵付け」の2つのパターンがあります。

絵付けの方法についていくつかご紹介します。

染付(そめつけ)

下絵付けの技法で、白色の胎土(やきものを製作する際の原材料として使用された土)に藍色の呉須という酸化コバルトを主成分とした顔料でデザインを描き、その上から透明な釉薬をかけます。すると、呉須の青色が明るく発色し、白い器の表面に絵を描いたような美しい陶磁器が完成します。

鉄絵(てつえ)

こちらも下絵付けの技法で、透明釉(とうめいゆう)の下に描かれる釉下彩(ゆうかさい)の一種です。酸化鉄などの鉄分を多く含む顔料で絵付けをし、その上から透明の釉薬をかけて本焼きします。すると鉄が変化し、黒色や淡い茶褐色になります。

この技法は、岐阜県の志野焼や美濃焼、唐津焼などでよく見られます。

色絵(いろえ)

上絵付けの技法で、釉薬をかけて本焼きした素地に、さらにさまざまな色の顔料でデザインを施し、低温で焼き上げます。

色絵で特に有名なのは石川県の九谷焼で、「九谷五彩」と呼ばれる緑・黄・紫・紺青・赤の色絵の具を自在に使って絵付けされます。

金彩(きんさい)

上絵付けの技法で、焼成後に金粉や金箔を施す方法です。金属を使用しているため、華やかで豪華な装飾が特徴です。

おわりに

陶磁器ややきもののデザインや装飾方法には、多くの技法や種類があります。お手持ちの煎茶道具や茶道具のデザインも、ぜひご覧になってみてください。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。