宮城県仙台市の老舗和菓子屋「売茶翁」と祖母
売茶翁についてさらに詳細に知りたい方は下記の記事をご覧ください。
私の祖母は、東京から仙台に移り住んでから50年もの間、茶道の先生として地域に貢献してきました。祖母が仙台で茶道教室を開いた頃から、私たち家族にとって特別な存在となったのが、仙台市の老舗和菓子屋「売茶翁」です。
祖母が初めて「売茶翁」を訪れたのは、仙台に移り住んで間もない頃でした。茶道教室を開くにあたり、生徒に提供する和菓子を探していた祖母は、地元で評判の「売茶翁」に足を運びました。そのときに出会ったのが、**「みちのくせんべい」**でした。軽やかな食感と絶妙な甘さが特徴の「みちのくせんべい」は、祖母の心を一瞬で捉えたようです。それ以来、茶道教室でのお茶会には、必ず「みちのくせんべい」が登場するようになりました。
祖母の茶道教室には、幅広い年齢層の生徒たちが集まっていました。初心者から経験豊かな方まで、皆が同じ空間で茶の湯を楽しんでいました。お稽古の終わりに、祖母が用意してくれる「みちのくせんべい」は、生徒たちにとっても楽しみのひとつでした。陶器のお皿と日本茶と一緒に提供されるそのせんべいは、茶会の雰囲気をより一層和やかにし、皆でその美味しさを共有していました。
また、**「どら焼」**も祖母のお気に入りでした。どら焼は、茶道教室の特別な日や、お世話になった方々への手土産として、よく選ばれていました。祖母が「売茶翁」のどら焼を選ぶ理由は、その上品な甘さとしっとりとした食感にあります。どら焼の皮と餡のバランスが絶妙で、祖母はいつも「これほど美味しいどら焼はなかなかない」と言っていました。
家族の団欒の時間にも、**「売茶翁」**の和菓子は欠かせませんでした。特に、季節の生菓子は私たちにとって特別な存在でした。春の和菓子には桜餅、夏には水羊羹、秋には栗蒸し羊羹、そして冬には雪見だいふくなど、季節ごとの和菓子を楽しむことが、私たち家族の年中行事のようになっていました。祖母は、これらの生菓子を味わいながら、いつも私たちに茶道の心を教えてくれました。
そして、家族の特別な時間には、**「のんこう」**が登場しました。濃厚な味わいと上品な甘さが特徴の「のんこう」は、祖母の大好物でした。お茶請けとして最高の贅沢だと祖母は言い、特別な日には「のんこう」を用意してくれました。私はその贅沢さに子供心ながらに特別感を感じ、少し大人になったような気分で祖母と一緒に「のんこう」を味わったものです。
私にとって、「売茶翁」の和菓子は、ただの甘いお菓子ではありません。それは、祖母との思い出が詰まった特別な存在です。祖母は茶道を通じて、私たち家族や生徒たちに日本の伝統文化の素晴らしさを伝えてくれました。そして、その茶道の心を支える一端を担っていたのが「売茶翁」の和菓子でした。
仙台に住んでいた頃、祖母と一緒に「売茶翁」を訪れるのが私の楽しみでもありました。店内に入ると、甘い香りが漂い、色とりどりの和菓子が並んでいました。祖母はいつも、どの和菓子を選ぶべきか真剣に考えていました。そして、家に帰ってからその和菓子をみんなで楽しむ時間は、私たち家族にとってかけがえのないひとときでした。
今でも、「売茶翁」の和菓子を目にすると、祖母との思い出が鮮やかによみがえります。茶道教室での生徒たちとの笑顔や、家族で過ごした静かな時間、そして祖母が教えてくれた茶道の精神。それらがすべて、「売茶翁」の和菓子とともに私の心の中に刻まれています。
祖母が東京から仙台に移り住んでからの50年、彼女が愛し続けた「売茶翁」の和菓子は、私にとっても大切な思い出の一部です。祖母が教えてくれた茶道の精神とともに、これからも「売茶翁」の和菓子を味わい続けたいと思います。
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投稿者プロフィール
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宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。
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