茶道の掛軸「且坐喫茶」の意味や読み方とは？

茶道の世界には、茶室に掛けられる掛軸（かけじく）には様々な禅の教えや人生哲学が込められています。その中でも「且坐喫茶（しゃざきっさ）」という言葉は、茶道や禅の精神を象徴する重要な掛軸の一つです。この言葉はシンプルでありながら、深い意味を持ち、茶の湯の心を表現しています。本記事では、「且坐喫茶」の読み方、意味、そして茶道での役割について解説します。

茶道の掛軸で使われる禅語や言葉について詳細に知りたい方は下記をご覧ください。

茶道の禅語一覧

1. 「且坐喫茶」の読み方

「且坐喫茶」の読み方は、「しゃざきっさ」となります。

且（しゃ）：一時的に、あるいはひとまず、という意味を持つ漢字です。
坐（ざ）：座る、腰を下ろすという意味です。
喫（きっ）：飲む、食べるという意味です。
茶（さ）：そのまま「お茶」を指します。

この言葉は、直訳すると「ひとまず座ってお茶を飲みなさい」という意味になります。

2. 「且坐喫茶」の意味

「且坐喫茶」は、元々禅宗に由来する言葉で、日常の忙しさや思索を一旦脇に置いて、ただお茶を楽しむことを勧める教えです。深く考えず、今この瞬間をただ受け入れるというシンプルながらも奥深い禅の教えが込められています。

この言葉には、次のような意味合いが含まれています。

「一旦座ってお茶を飲みなさい」：この言葉は、何か問題や悩みを抱えている時でも、ひとまず心を落ち着けてお茶を飲むようにと促しています。お茶を飲むという行為は、今この瞬間に意識を集中させ、心を静める効果があります。忙しい日常の中で、ひと呼吸置くことの大切さを教えてくれます。
「今この瞬間を大切に」：禅や茶道では、過去や未来を思い煩うのではなく、現在の瞬間に集中することが重視されます。「且坐喫茶」という言葉は、そうした心のあり方を象徴しています。過去の出来事や未来の心配事にとらわれず、目の前の一杯の茶を楽しむことが、心の平安と豊かさにつながるという教えです。
「どんな時でも茶は心を整える」：茶道では、一杯のお茶が心の調和を生むとされています。どんなに忙しくても、一時的に立ち止まり、座ってお茶を味わうことで、心が安らぎ、冷静に物事を考えることができるようになります。

3. 茶道での「且坐喫茶」の役割

茶道において、「且坐喫茶」は非常に象徴的な言葉であり、茶室に掛けられる掛軸としてよく用いられます。この掛軸は、茶道の精神を直接的に表現しており、参加者に心を落ち着け、茶の時間を楽しむことを促します。

茶道とは？～その歴史と魅力を探る～

心の静寂と集中：茶道の場では、亭主と客が互いに心を静め、落ち着いて茶を楽しむことが重要です。「且坐喫茶」の掛軸は、茶室に入る人々にこの精神を思い出させ、その場の雰囲気を整えます。心を一つにして茶を楽しむための道標とも言えるでしょう。
無駄のない一杯の茶：茶道では、すべての動作が慎重に行われ、無駄がなく、美しい一連の流れが求められます。「且坐喫茶」の教えは、今この瞬間に集中し、シンプルでありながら豊かな一杯の茶を味わうという茶道の核心を表現しています。
客へのおもてなしの心：茶室で「且坐喫茶」の掛軸が掛けられている場合、亭主は客に対して「どうぞゆっくりとお茶を召し上がってください」というおもてなしの気持ちを込めています。この言葉は、客にリラックスして茶の時間を楽しんでほしいというメッセージを伝えます。

4. 日常生活における「且坐喫茶」の教え

「且坐喫茶」の教えは、茶道や禅の場だけにとどまらず、現代の忙しい生活の中でも役立つ心のあり方を示しています。仕事や日々の忙しさに追われる私たちも、時には立ち止まり、心を落ち着けることが重要です。

ストレスの軽減：「且坐喫茶」は、ストレスが溜まったときや疲れたときに、一旦手を止めてリフレッシュする重要性を教えてくれます。お茶を飲むことで、頭をクリアにし、新しい視点で物事を捉えることができるようになります。
マインドフルネスの実践：「且坐喫茶」の教えは、現代で注目されているマインドフルネスと共通点があります。お茶を飲む瞬間に意識を集中させ、過去や未来にとらわれずに現在を感じることが、心の平穏をもたらします。日常生活でもこの姿勢を意識することで、より充実した時間を過ごすことができるでしょう。

5. まとめ

「且坐喫茶」という言葉は、禅の教えに基づいたシンプルでありながら深遠な意味を持つ言葉です。茶道においては、掛軸として茶室に掲げられることで、茶の湯の精神を表現し、客や亭主に心を落ち着け、現在の瞬間を大切にすることを促します。また、日常生活においても、忙しい日々の中で一時的に立ち止まり、心を整えるためのメッセージとして活用できる教えです。

忙しさに追われる現代社会だからこそ、「且坐喫茶」の言葉を心に留め、ひと時のお茶を味わうことで、心の安らぎと豊かさを取り戻すことができるでしょう。

投稿者プロフィール

東叡庵煎茶道講師/日本文化PRマーケター

宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。

茶道の掛軸「一粒万々倍」の意味や読み方とは？秋に使える深い意味！

2024年10月9日

茶道