茶経とは?

「茶経(ちゃきょう)」は、唐代の茶人・陸羽(りくう)が著した、茶に関する最古の書物です。正式には『茶経(ちゃけい)』と呼ばれ、全3巻からなるこの書は、茶の歴史や製法、飲み方、さらには茶の社会的な役割など、茶に関する包括的な知識を体系的にまとめたものです。茶文化の発展に大きく寄与し、現在に至るまで茶道煎茶道や茶文化に深い影響を与え続けています

茶経の著者:陸羽とは?

陸羽(733年頃 – 804年頃)は、茶の歴史において非常に重要な人物であり、彼自身が「茶聖」とも称されます。幼少期に捨て子として育てられた陸羽は、成長するにつれて学問や文芸に傾倒し、特に茶の文化に強い興味を持ちました。彼は茶を飲むことや栽培することだけでなく、茶の製法や器具、さらには茶の持つ哲学的な側面にも深い関心を抱いていました。この興味と知識が後に『茶経』を著す原動力となりました。

茶経の構成

『茶経』は、茶の歴史、栽培、製造方法、器具、飲み方、そして茶の文化的・社会的な意義について述べた全10章から構成されています。以下、その各章の概要を説明します。

  1. 一之源(いちのげん)
    この章では、茶の起源や歴史的背景が述べられています。陸羽は、茶が最初に用いられたのは神農(中国古代の神話的帝王)によるもので、医薬として利用されたことを説明しています。また、古代から茶がどのように発展してきたかを述べています。
  2. 二之具(にのぐ)
    茶を淹れるための道具について記載しています。ここでは、茶碗、急須、炉などの器具の種類やその用途が詳細に解説されています。陸羽は茶道具に非常にこだわりを持ち、それぞれの道具の形状や材質にも注目しています。
  3. 三之造(さんのぞう)
    茶の製法について述べた章です。ここでは、茶の葉の摘み取り方から加工方法、保存方法まで、茶葉が飲み物として完成するまでの過程が細かく説明されています。
  4. 四之器(しのき)
    この章では、茶を淹れる際に用いる器具の具体的な使い方について解説されています。陸羽は、茶の味わいを引き出すためには道具の正しい使用が不可欠であると強調しています。
  5. 五之煮(ごのしゃ)
    茶を煮る方法について述べられています。茶をどのように煮るべきか、適切な水の温度や時間、火の強さなど、細かな注意点が記されています。
  6. 六之飲(ろくのいん)
    茶の飲み方についての章です。ここでは、どのように茶を飲むべきか、その際に心がけるべき礼儀や姿勢、茶の美味しさを引き出すためのポイントが述べられています。
  7. 七之事(しちのじ)
    茶に関する事象についてまとめています。具体的には、茶にまつわる逸話や故事が取り上げられ、茶の文化的な側面を解説しています。
  8. 八之出(はちのしゅつ)
    茶の産地について解説されています。陸羽は中国各地の茶の名産地をリストアップし、それぞれの地域で生産される茶の特徴や品質について述べています。
  9. 九之略(きゅうのりゃく)
    この章では、茶に関する知識の総まとめとして、簡略化された要点が記載されています。茶を楽しむための基本的なルールや心構えを再確認できる内容となっています。
  10. 十之図(じゅうのず)
    茶に関連する図表が掲載されています。茶器や製法の図解が含まれ、視覚的に茶の作法を理解できるようになっています。

茶経の影響

『茶経』は、茶文化の発展に大きな影響を与えました。陸羽が著したこの書は、単に茶の製法や飲み方を記録しただけでなく、茶の哲学的・精神的な側面にも焦点を当てました。このため、茶が単なる飲み物以上の存在となり、精神を整えるための儀式や文化としての地位を確立することになりました。

また、『茶経』は日本にも影

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。
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