6月に行われる夏越の祓とは?

夏越の祓(なごしのはらえ)とは、毎年6月末に行われる日本の伝統的な神道行事で、半年間の罪や穢れを祓い、残りの半年を無事に過ごすために行われる儀式です。人々の心身を清め、健康や無病息災を祈る意味が込められています。夏越の祓は、1年の前半を終えるタイミングで行われるため、1年の後半に向けた新たなスタートとしても重要な行事とされています。

夏越の祓の起源と歴史

夏越の祓の起源は、古代日本に遡ります。「祓(はらえ)」は、日本神道における浄化の儀式であり、古くから行われてきました。日本書紀や万葉集にもその記述が見られるように、朝廷や貴族の間では特に重要視されていた行事です。元々は6月と12月の年2回行われており、6月の祓は「夏越の祓」、12月の祓は「年越の祓」と呼ばれています。

夏越の祓は、夏の暑さが厳しくなる時期に行われるため、疫病や災害を避けるための祈りが中心にありました。特に古代では、病気や災厄が多く、これらを避けるための祈祷や儀式が重要視されていました。現代では、神社で行われる「茅の輪(ちのわ)くぐり」が夏越の祓の象徴的な行事として知られています。

茅の輪くぐり

茅の輪くぐりは、夏越の祓の代表的な儀式です。神社の境内に設置された茅で作られた大きな輪(茅の輪)を、特定の順序でくぐることで、穢れを祓い清めるとされています。茅の輪くぐりの作法には、以下の手順があります。

  1. 左回りに茅の輪を一周する。
  2. 次に右回りに一周する。
  3. 最後に再び左回りに一周して、計三回くぐる。

茅の輪は、古代から厄除けや無病息災を願うための植物として利用されており、この輪をくぐることで、厄災から身を守り、清浄な状態で日々を過ごせるとされています。

人形(ひとがた)祓い

夏越の祓では、人形(ひとがた)祓いという風習も見られます。人形とは、紙や草などで作られた人の形をしたものです。これに自分の名前や生年月日を書き、自分の身代わりとして穢れを移します。人形を川や海に流すことで、災厄や不運を遠ざけるという儀式です。

また、神社によっては、人形をお供えしたり、神職が祓い清めることで参拝者の健康や幸運を祈る祈祷が行われます。このような風習は、日本各地の神社で現在も広く行われています。

夏越の祓の食文化:水無月

夏越の祓の時期には、特定の食べ物をいただく習慣もあります。代表的なのが、京都発祥の和菓子である「水無月(みなづき)」です。水無月は、三角形の形をしたういろうの上に小豆をのせた和菓子で、6月の終わりに食べることで暑い夏を乗り切るとされています。

水無月の三角形の形は、暑気払いの氷を表しており、古代では氷を口にすることで夏の厄災を避けるという意味がありました。現在でも、京都を中心にこの時期になると水無月が販売され、夏越の祓の風習として親しまれています。

現代における夏越の祓

現代においても、夏越の祓は全国各地の神社で行われ、地域によってさまざまな形で受け継がれています。特に、梅雨が明け、夏の暑さが本格化する前に心身をリフレッシュさせるための大切な行事として、多くの人々に親しまれています。

また、夏越の祓は、単に穢れを祓うだけでなく、過去半年間の反省と新たな気持ちで次の半年を迎えるための節目としても捉えられています。このため、心身の浄化や生活習慣の見直し、健康維持を意識する良い機会ともなっています。

夏越の祓のまとめ

  • 夏越の祓は、毎年6月末に行われる厄払いの儀式で、半年間の罪や穢れを祓い清める行事です。
  • 茅の輪くぐりは、穢れを祓うために神社で行われる代表的な儀式です。
  • 人形祓いや、京都の和菓子水無月を食べる習慣など、さまざまな風習が現在でも受け継がれています。
  • 現代では、健康や無病息災を祈る行事として、多くの人々に親しまれています。

夏越の祓は、半年間の節目を迎える重要な行事であり、過去を清算して新たな気持ちで生活をスタートさせるための風習です。