煎茶道のマナーについて|はじめて茶会に呼ばれたら守ること

日本の伝統文化である煎茶道(せんちゃどう)のお稽古や茶会の作法やマナーについてご紹介します。

こんにちは。

今回は、よくお尋ねいただく「煎茶道の茶会マナー」についての記事です。

煎茶道(せんちゃどう)ってなに?

煎茶道体験・煎茶道サロンのイメージ

煎茶道(せんちゃどう)というのは、茶道の一流派で、急須をもちいて茶葉(ちゃば)からお茶を淹れる流派のことです。

煎茶以外にも、玉露紅茶ほうじ茶、さらには日本酒など、お淹れする嗜好品(しこうひん)は多岐(たき)にわたります。

茶道とは発祥の歴史が異なりますが、茶禅一味や一期一会といった精神性は同じで、伝統を重んじます。

煎茶道の歴史について

煎茶道は、江戸時代に中国から伝わってきた文人趣味(ぶんじんしゅみ:書や画など風流をたのしむ趣味)や黄檗禅宗(おうばくぜんしゅう)と合流し、抹茶の茶道にはない、独自の進化をとげてきました。江戸時代中期には茶道は形式にとらわれすぎるあまり、形骸化していました。それに異議を唱えた知識人たちが形にとらわれない茶道として見出したのが煎茶道です。そのため、煎茶道は茶室や道具に必要以上のこだわりを持たず、自由な精神や、侘び寂びと対峙する美意識である風流(ふうりゅう)を重んじる文化サロン的な要素がつよくなり、まさに”文化をたのしむ”ことをメインとした文化だといえます。

煎茶道を趣味としておこなっていた著名人としては、江戸時代に京都で活躍した町絵師である伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)、明治の文人である富岡鉄斎(とみおかてっさい)、紙幣にもなった夏目漱石(なつめそうせき)などがあげられます。

茶道のお茶会のマナーとは

抹茶の茶道(まっちゃのさどう:以下、抹茶道)のお茶会にお呼ばれした際に、よく聞くのが、以下の項目です。

  • 茶会への持ち物…黒文字(くろもじ:和菓子をたべる際の楊枝)や懐紙(かいし)と懐紙入れ、菓子などの心ばかりの品。
  • 茶会での服装…スーツ、着物、色、素材など。
  • 茶菓子の食べ方やお茶の頂き方。
  • 当日の流れ…何時に行って、どこに座るのか、挨拶のタイミングなどetc、、、

茶会がはじまる前から、準備することがたくさんありますね。

それでは煎茶道はの茶会はどうでしょうか。

煎茶道のマナーってなに?

煎茶道のマナーとは一体なんでしょうか。

まずはマナーのそもそもの意味について、ためしに国語辞典で調べてみると、以下のような意味がでてきます。

作法・マナーとは

  1. 物事を行う方法。きまったやり方。きまり。しきたり。
  2. 立ち居振る舞い、動作の正しい法式。

たしかに抹茶などのお茶会などにいくと、お茶をいただく順番があったり、正客(しょうきゃく)が床の間飾りについて聞かれていたりと、流派ごとのお茶会によって違う場面をよく見かけます。しかし煎茶道では、それがちょっと難しいのです。

じつは煎茶道の流派は、全国に300以上あるといわれており(※諸説あり)、その流派ひとつひとつの”きまったやり方、きまり、しきたり、立ち居振る舞い”を事前にカバーすることは、とても難しいのです。煎茶道の全国組織である”全日本煎茶道連盟(本部:京都府宇治市)でさえ把握していない流派がたくさんあるといわれています。

しかし先述したとおり、煎茶道は”文化をたのしむ”ことを目的としています。ただでさえ煎茶道人口が減っているいま、貴重な煎茶道の茶会に、マナーや作法がわからないいった理由だけで参加を断念するのはもったいないです。

なので最低限、茶会を用意してくださった方へ、”感謝の気持ちがつたわる作法やマナーをされる”のが一番よい方法だと思います。

煎茶道の作法・マナーの一例

煎茶道は、美味しいお茶を淹れて交流を楽しむことを目的としておりますので、それだけ意識していれば、その後に茶会をどうお楽しみいただくかはお客様に委ねられていると言ってよいです。

また決してマナーというわけではありませんが、茶会を気持ちよく楽しむ立ち居振る舞いの例として、いくつか紹介させていただきます。

煎茶道を楽しむ作法やマナー例

  • はこばれてきた煎茶碗(せんちゃわん)をお持ちになる前に、「頂戴いたします」とご挨拶いたしましょう。
  • お茶会は、主催された側とお客様の交流の場でもありますので、互いを尊敬しあう気持ちがあると、美しいです。
  • 一煎目(いっせんめん:1杯目のお茶)のあとに茶菓子をお召し上がりください。
  • 煎茶道の茶会では、流派によっては二煎目、三煎目を淹れていただけます。茶葉に含まれている味が凝縮されている一煎目は、お茶本来の味をたのしみ、二煎目以降から茶菓子をお召し上がりいただくと、より美味しくいただけます。
  • お茶碗は両手でしっかりと持って、お召し上がりください。
  • 見ていて安心でいる所作は、美しく見えます。お茶会で、美意識を高めてみましょう。
  • 茶菓子は、付いてくる黒文字(くろもじ:楊枝のこと)で小さく分けて食べましょう。せっかくの和菓子ですから、口いっぱいに頬張らず、切ってからお召し上がりいただくと美しくみえます。干菓子やお饅頭(薯蕷まんじゅうや酒まんじゅう)がでてきた際は、黒文字は付いてきませんので、そういったときは手でお召し上がりください。

煎茶道の作法・マナーについての私見

”型どおり”という言葉が日本文化の伝統芸道の中には共通言語としてありますが、煎茶にはほとんどないように思えます。

亭主とお客様が掛け合いをし、その空間を楽しむことが目的であるため、逆に型があるほうが難しいのです。それだけにいわば自由なむずかしさがあるということだと思います。

お茶を飲んでお客様が楽しんでいるようでしたら、書画を描いたり、一首詠んだり、琴を弾いたり、語らいをしたり、その一座の雰囲気をの楽しむことが煎茶文化だと考えております。お客様をむかえる亭主にとっては、決まった動きをするのではなく、いかにお客様に楽しんでいただくかに注視し、心配りをすることが大切だと言われます。

ゆえにお茶会やお稽古にくるお客様には、縁あってご参加いただいている一座ですので、お菓子やお茶をいただくそのひと時への感謝の気持ちをもっていただく、それだけで良いのです。なのでぜひ煎茶道の茶会や体験、ワークショップなどにも、どんどん遊びに来てくださいね。

いかがでしたでしょうか。

煎茶道のお茶会は、お客様に茶文化を楽しんでいただくことを目的としておりますので、お茶会の前に作法・マナーを覚えなきゃいけないのかな、、、など気にせず、ぜひお気軽にお越しください。

いっしょに日本文化を楽しみましょう。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。