仙台市の和菓子屋「売茶翁」と母
私の母は、仙台で生まれ育ち、35年間にわたり書道の先生として活動してきました。書道の道を歩んできた母にとって、和菓子は生活の中で特別な存在でした。特に、仙台市の老舗和菓子屋「売茶翁」の和菓子は、母の教室でも家でも欠かせないものでした。
「売茶翁」は、明治12年に創業され、昭和22年に現在の仙台市青葉区春日町に店を移し、今もなおその伝統を守り続けています。母は、1988年に仙台市青葉区で生まれ、0歳の頃から「売茶翁」に通い続けてきました。母にとって、「売茶翁」はただの和菓子屋ではなく、幼い頃からの思い出が詰まった特別な場所だったのです。
書道教室での母の教えは、静寂と集中の中で行われますが、休憩時間にはその緊張感が和らぎ、母が用意した「売茶翁」の和菓子を楽しむ時間が訪れます。**「みちのくせんべい」**は、その軽やかな食感と程よい甘さで、生徒たちの疲れを癒す特別なおやつでした。母は、書道の技術を教えるだけでなく、和菓子を通じて生徒たちに日本の伝統文化の一端を感じてもらうことを大切にしていたのかもしれません。
「売茶翁」の和菓子は、素材にこだわり、丹波大納言や丹波白小豆、備中白小豆など、国産の豆を使った**「羊羹」**も母のお気に入りでした。これらの羊羹は、豆の豊かな風味が口いっぱいに広がり、母はその味わいをいつも楽しんでいました。母の書道教室の生徒たちも、休憩時間に羊羹を一口食べることで、書道の集中から解放され、ほっと一息つくことができたようです。
季節ごとに変わる**「生菓子」**も、母が特に楽しみにしていたものでした。春には桜餅、夏には水羊羹、秋には栗蒸し羊羹、冬には雪見だいふくなど、四季折々の和菓子が、母の書道教室に彩りを添えていました。母は、その季節感を大切にし、生徒たちに季節ごとの美しさを伝える一環として和菓子を提供していたのです。
母が「売茶翁」の和菓子を愛する理由は、その味わいだけでなく、創業時から変わらぬ製法で作られることへの信頼にもありました。特に、**「干菓子」や「最中」**は、母が「最高」と称するほどのお気に入りでした。干菓子はその繊細な美しさと上品な甘さが、最中はその香ばしさとふっくらとした餡が、母の心を捉えて離しませんでした。
母が生まれ育った青葉区春日町で、幼い頃から通っていた「売茶翁」は、母にとって家族のような存在でした。0歳の頃から母を見守り続けてきたその和菓子屋は、時を超えても変わらない味と風格を持ち続けています。母は、和菓子を通じて、私たち家族にもその魅力を伝えてくれました。
家では、母が持ち帰った「売茶翁」の和菓子が、私たち家族の食卓を彩りました。特に、**「丹波大納言」や「丹波白小豆」**の羊羹は、煎茶道をやっていた父や茶道教室を運営していた祖母、そして私にとっても特別な存在で、母がその味わいを楽しむ姿を見るたびに、和菓子が家族の絆を深める役割を果たしていると感じました。
また、**「備中白小豆」**の羊羹も、母がよく購入してきた和菓子の一つです。この羊羹は、備中白小豆の自然な甘さが生きており、母はその優しい味わいを愛してやみませんでした。家族揃って和菓子を楽しむ時間は、私たちにとってもかけがえのないものでした。
母が愛した「売茶翁」の和菓子は、私たち家族にとっても特別な存在であり、その味わいを通じて母の教えや書道の精神を感じることができました。今でも、「売茶翁」の和菓子を口にすると、母との思い出が蘇り、その温かい笑顔が思い浮かびます。
「売茶翁」の和菓子は、ただの甘味ではなく、母にとっては書道の教えと結びついた大切な文化の一部でした。その和菓子を味わいながら、母は常に書道の精神と向き合い、そしてその精神を私たち家族にも伝えてくれました。
これからも、「売茶翁」の和菓子を楽しみながら、母の教えや書道の精神を大切にしていきたいと思います。母が築いた教室や家庭での豊かな時間を、これからも和菓子と共に継承していくことが、私にとっての使命でもあります。
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投稿者プロフィール
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宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。
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