大津絵の「鬼の寒念仏」の意味とは?読み方、なぜ鬼?販売店など紹介!

はじめに

大津絵は、日本の伝統的な民画で、江戸時代から庶民に親しまれてきました。その中でも「鬼の寒念仏」は特に有名です。この絵にはどのような意味が込められているのでしょうか?本記事では、「鬼の寒念仏」の読み方や意味、なぜ鬼が描かれているのか、さらに大津絵の販売店についても詳しく解説します。

参考:びわこビジターズビューロー「江戸時代の人気キャラクター!大津に伝わる鬼をご紹介します!

「鬼の寒念仏」とは?

「鬼の寒念仏」(おにのかんねんぶつ)は、大津絵の一種で、僧衣をまとった鬼が描かれています。この絵は、慈悲深い僧侶の姿とは裏腹に、偽善者を風刺しています。鬼は仏教の教えである三毒(貧欲、瞋恚、愚痴)を象徴し、人々の我見や我執を示しています。鬼の角が折れていることは、自己の欲望や執着を断ち切ることを意味しています。

参考:大津絵の店「風刺画 鬼の寒念仏

三毒

仏教の教えにおいて「貧欲」「瞋恚」「愚痴」は、三毒(さんどく)と呼ばれる煩悩の一部であり、これらを克服することが修行の目標とされています。それぞれの意味について説明します

貧欲(どんよく)

貧欲は、執着や欲望を意味します。具体的には、物質的な欲望や自己中心的な欲求、他人を羨む心などを指します。貧欲に囚われると、常に満たされない欲望に苦しむことになります。

瞋恚(しんい)

瞋恚は、怒りや憎しみを意味します。怒りによって心が乱れ、他人に対して攻撃的な態度をとることを指します。瞋恚は、争いや対立を生み出し、自分自身や他人に害を及ぼします。

愚痴(ぐち)

愚痴は、無知や愚かさを意味します。正しい知識や理解に欠け、迷いや誤解によって苦しむことを指します。愚痴は、自己中心的な考え方や誤った信念に基づく行動を引き起こします。

これら三毒は、仏教において心の浄化と修行の妨げとされ、克服すべき対象とされています。貧欲、瞋恚、愚痴を抑え、心を清らかに保つことが、悟りへの道とされています。

鬼の読み方と意味

大津絵に登場するは、「おに」と読みます。この鬼は、元来天つ神に対する邪神を指し、恐ろしい姿で描かれます。赤鬼や青鬼などの姿は、陰陽道の影響を受けています。人の姿に牛の二本角や虎の牙を持ち、裸で虎の皮のふんどしを締めているのが定番です。

なぜ鬼が描かれているのか?

「鬼の寒念仏」は、人間の心の内に住む鬼を象徴しています。人間は自分の都合で物事を考え、自分の欲望に従って行動します。大津絵の鬼は、そのような自己中心的な心を風刺し、戒めるために描かれました。また、鬼が僧衣をまとっていることで、偽善者の姿を強調しています。

参考:大津絵の店 大津絵の鬼

大津絵の鬼の角はなぜ片方折れているのか

大津絵の「鬼の寒念仏」に描かれている鬼の角が片方折れているのには、特別な意味があります。この片方の角が折れているのは、人の「我」を象徴する角を折ることで、自己の欲望や執着を断ち切り、救いを示唆しているとされています。鬼は、貧欲、瞋恚、愚痴という仏教の三毒を象徴し、それらが人間の心の中に存在することを表しています。角が折れていることで、三毒の一部が克服されつつあることを示し、ある種の希望や解放を暗示しているのです。

このように、大津絵の鬼の角には、深い哲学的な意味が込められており、ただの絵画ではなく、教訓や風刺の要素が強く含まれています。この視点から見ると、大津絵は単なる装飾品ではなく、当時の社会や人々の心を映し出す鏡のような存在だったと言えます。

鬼の空念仏とは

「鬼の空念仏(おにのからねんぶつ)」とは、無慈悲な者が形だけ慈悲深いふりをすることを指す言葉です。これは、実際の心の中には慈悲や善意がないのに、表面的には慈悲深い行動を装うという意味を持っています。

この言葉は、大津絵の「鬼の寒念仏」と同じように、偽善者を風刺するために使われます。つまり、鬼が僧衣をまとって念仏を唱えている姿は、外見だけを整えても中身が伴わなければ何の意味もないことを示しています。この風刺的な表現を通じて、真の慈悲や善意を持つことの重要性を強調しているのです。

販売店の紹介

大津絵は、現在でも多くの販売店で購入することができます。以下は、代表的な販売店です。

  • 大津絵美術館: 大津市にある美術館で、さまざまな大津絵を展示・販売しています。
  • オンラインショップ: 大津絵の館や他の専門店が運営するオンラインショップでも購入可能です。
  • 観光地の土産物店: 大津市や京都の観光地にある土産物店でも、大津絵関連商品を取り扱っています。

まとめ

大津絵の「鬼の寒念仏」は、偽善者を風刺する風刺画であり、僧衣をまとった鬼が描かれています。人間の心の内に住む鬼を象徴し、自己中心的な心を戒める意味が込められています。現在でも多くの販売店で購入することができるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。