鳴子こけしとは?こけしの特徴や歴史、由来、発祥の地である宮城県訪問ブログ

鳴子こけしについて、歴史や概要、現地レポートをまとめました

こちらの記事では、「鳴子こけし」について、その概要や歴史、こけし発祥の地である宮城県大崎市鳴子での現地レポートの様子をご紹介していきます。

記事の執筆者は、みんなの日本茶サロン講師の東叡山です。

以下のような方におすすめしたい記事です。

  • かわいいお土産や旅行に興味のある方
  • 民芸品や工芸品に興味のある方
  • 宮城県在住の方

「こけし」が流行しているらしい

最近は”コケ女”というのが流行っているそうです。

”コケ女”とは、文字通り温泉街の土産物として有名な「こけし」が好きな女性たちのことです。

数百年前から続く”こけし”と、インスタやモダンファッションに慣れた現代の女性がマッチングしているギャップに、名称がつけた結果”こけ女”となったわけですが、じつは”こけしブーム”というのは、定期的にあるようです。

古くは、戦前の”こけし専門書”の発刊をトピックスとしたものや、戦後の団体旅行ブームで温泉旅館需要が高まった際の土産物ブーム。また柳宗悦氏や河井寛次郎氏の民芸運動の盛り上がりによる”こけし”コレクターの出現など、他にも数多あるそうです。

そんな”こけし”ですがいつからあるのか。

じつはなんと1,300年前なんです!

今回は、どの年代にも”うける”工芸品である”こけし”を、こけし発祥の地として知られる宮城県大崎市出身のわたしが解説していきます。

こけしについてさらに詳細に知りたい方は下記の記事をご覧ください。

こけしとは

こけしとは、江戸時代後期頃から、東北地方の温泉において、湯治客(とうじきゃくに土産物として売られるようになった木轆轤(きろくろ)で挽いた木製の人形玩具(にんぎょうがんぐ)のことです。別に小芥子とも書きます。

一般的には、木轆轤で挽いて摩擦で表面を滑らかにした後の球形の頭部と円柱の胴に絵付けをした、シンプルな形態をしています。

こけしの名前の由来とは

こけしの名前の由来は諸説あり、大きくは以下の3つになります。

まずは”木削子”説です。その名の通りですが、木(こ)を削って(けずって)つくった小さい人形というものです。日本では古来より、なにかしらの願いや想いを込めて人形をつくる文化があります。ひな人形や土人形が有名です。こけしもそれにならってつくられたのでは、と考えられています。

次に”木の芥子人形(けしにんぎょう)”説です。これもその名の通りですが、木材でつくった芥子人形(けしにんぎょう:非常に小さい人形のこと)という考え方です。宮城県仙台市には、堤土人形(つつみつちにんぎょう)という郷土玩具があり、それにならって、木材で芥子人形をつくったのでは、という説です。

さらに”芥子坊主に似ている説”もあります。江戸時代の男の子や女の子たちの髪型が絵付けされており、そういった子たちを芥子坊主(けしぼうず)と呼んでおり、似ているからという考え方もあるそうです。

こけしの歴史とは

こけしの歴史は古く、奈良時代までさかのぼります。当時の社会混乱をおさめるため、称徳天皇(しょうとくてんのう)によって発願され制作された百万塔(ひゃくまんとう)の製作技術がベースにあるといわれています。

百万塔とは、轆轤挽(ろくろび)きし白色顔料が塗布された、高さ30センチぐらいの木製の小塔です。中は空洞になっており、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)と呼ばれる仏教の経典がはっていました。

なんとこの小塔が、文字通り、奈良時代に百万個も製作されたというのです。

現在でも奈良国立博物館所蔵の百万塔が、常時展示されていて見学できるのですが、こんなにも歴史が古いと聞くとびっくりですね。

製作したのは、木地師(きじし)と呼ばれる東近江発祥の木工集団です。

この木地師が良質な木材をもとめて全国に散らばり、東北の温泉街に定住するようになった木地師たちが制作するようになったのがこけしだといわれています。

鳴子こけしとは

鳴子こけしとは、宮城県大崎市の鳴子温泉郷を中心に生産されるこけしです。最大の特色は、首を回すと「キュッキュッ」と音が鳴ること。胴体は肩が張り、中央部に向かって少し細くなり、裾に向かって再び広がった安定感のあるシルエットが有名です。

鳴子こけしの歴史とは

先述したように、こけし文化は、東北の温泉街を中心に育まれてきた文化です。

東北地方は”秘湯”(ひとう)というワードがうまれるほど山奥や各地に温泉が湧き出ています。

東北地方では昔、第1次産業がメインのエリアであるため、作物が収穫できない農業の閑散期である冬に、日ごろ休み無しで働く身体を滋養するため、一家団欒で数週間にわたり温泉宿に宿泊する慣習である湯治文化(とうじぶんか)がうまれました。

宮城県大崎市にある鳴子温泉は、その湯治文化を象徴する代表的な温泉街です。

温泉の泉質(せんしつ:アルカリ性や酸性など温泉の分類のこと)が世界に11種類ある内の、なんと9種類の泉質を楽しめる、いわば温泉の横綱、長居するのにもってこいの場所なんです。

また大崎市は、世界農業遺産にも登録されるほど、豊かな穀倉地帯”大崎平野”を中心に、東北の米どころとして知られています。疲れた身体を癒すため、生まれるべくして生まれた文化なんですね。

「こけし」の制作工程

こけしの制作工程を、簡単にご紹介します。 

【こけし制作工程】

  • ①原木の伐採
  • ②木材の乾燥
  • ③乾燥した木材を切断
  • ④ろくろ挽き
  • ⑤胴体と頭で首入れ
  • ⑥絵付けをして完成

こけしの原木は、きめ細かな白い木肌を持つミズキや、歳月とともに美しい光沢を増すイタヤカエデなどが選ばれます。

木々が乾燥する秋口に山に入って木材を調達し、木を伐採します。

切り倒された木は半月から1ヶ月くらい、枝・葉をつけたまま放置されます。
これは、木の幹から水分を抜くためです。その木を約7尺(210cm)の長さに切り皮をむき約1年間自然乾燥され、こけし作り使われます。

その後、想定のこけしの大きさや木目を考えて切断します。

切ったあとの木材は、こけしの形にするため木轆轤にて頭挽きと胴挽きをおこないます。

木轆轤にて挽いた後の頭と胴は、ろくろで胴を回転させながら、摩擦を利用して、頭を合わせます。

形ができたコケシは、伝統的な絵柄や色彩によってデザインされて、こけしとして湯治や観光で訪れた人々を楽しませるお土産として店頭に並びます。

鳴子こけしの口コミやレビュー

https://twitter.com/tetsuyaaaaa_/status/1219140149423964161
鳴子こけしレビュー
鳴子こけしレビュー

鳴子こけし発祥の地「宮城県大崎市」のこけしスポット紹介

JR東北新幹線「古川駅」から車で40分、鳴子温泉郷に到着します。

季節は秋がおすすめです。東北地方は、奥羽山脈に沿って温泉街が点在しているため、山の紅葉がとてもきれいです。

電車もいいですが、鳴子温泉郷は、川渡温泉(かわたびおんせん)や鬼首温泉(おにこうべおんせん)、東鳴子温泉など多岐にわたる温泉地を抱えているので、車移動を前提に移動したほうが良いです。

鳴子温泉湯めぐり駐車場(無料)に車をとめたのち、徒歩で鳴子温泉街を見て回ります。

まさに”こけし”のデパート、あちこちが”こけし”になっています。

クレイジーな街づくりですね。

こけし一本集中型です。

また鳴子のお店に入ると店内はこけしだらけ。

歩いでいるだけで面白いです。

川渡温泉「準喫茶カガモク」

鳴子温泉郷の一角、川渡温泉(かわたびおんせん)エリアにある「準喫茶カガモク」さんにやってきました。

こちらは喫茶店といいながらも、さすが鳴子温泉郷の一角、店内はこけしだらけです。

そしてそのこけしが、一言で表すと「こけしの進化」?、「こけしのダイバーシティ化」?

店内でコーヒーを飲もうとお座敷にあがって何気なくテーブルを見たら、足がこけしでした。

思わず二度見するほど驚きましたが、天板はしっかりした木目の木材で、足が可愛らしいこけしというギャップに思わず見惚れました。

こけしテーブルに目を奪われていると、運ばれてきたコーヒーを飲みながら、さらに驚きました。

なんと「こけしコースター」に「こけしミルクピッチャー」!

いま自分の生活を振り返ると、木材の生活雑貨がたくさんあります。

こけしというのは、木工の基礎ともなっている木地師の技術が使われています。

木材だったらこけしになる!こけしの未来は明るいです!!

川渡温泉「準喫茶カガモク」基本情報

川渡温泉「準喫茶カガモク」の住所や営業時間をご紹介します。

  • 住所: 〒989-6100 宮城県大崎市鳴子温泉川渡49
  • 問合せ先:070-5540-7150
  • 営業時間:10時~16時(毎週金土日のみ開店、不定休)
  • アクセス:JR陸羽東線「川渡温泉駅」から徒歩15分

鳴子こけし購入のおすすめスポットをご紹介!

こけしは、とてもリーズナブルな値段でお土産として店頭に並んでいます。

こんな感じで、鳴子温泉駅から目の前の「湯の街通り」には、たくさんのお土産や雑貨屋さんがならんでいます。

そのなかでもおすすめのお店を2店ほどご紹介します。

鳴子こけし専門店「桜井こけし店」

鳴子こけしを代表する桜井昭寛氏のこけし工房です。

桜井家は鳴子温泉にて江戸末期から代々続く、木地師の家系であり、代々伝統の技術を受け継ぎながらも、昔ながらのイメージを覆すモダンなデザインの”こけし”を制作されています。

鳴子こけし専門「桜井こけし店」基本情報

桜井こけし店の住所や問い合わせは下記の通りです。

  • 住所: 〒989-6823 宮城県大崎市鳴子温泉湯元26−6
  • 問い合わせ先:0229-87-3575
  • 営業時間:8時~19時
  • アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩5分

岩下こけし資料館

岩下こけし資料館では、こけし関するあらゆる資料が展示されています。日本最古のロクロで制作の古木器や東北各地のこけし、現代作家によるこけしや職人による木轆轤の実演が行われています。

なかにはこけし以外にも、こけし制作技術を応用した木のスプーンやお盆、皿、お箸なども販売していますので、ぜひお立ち寄りください。

岩下こけし資料館の基本情報

岩下こけし資料館の営業時間や住所をご説明します。

  • 住所:宮城県大崎市鳴子温泉古戸前80
  • 問い合わせ先: TEL0229-83-3725  FAX0229-83-2666
  • 営業時間:7時30~18時
  • アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩18分、最寄りのバス停「鳴子総合支所」から徒歩21分

鳴子こけしを見るなら「日本こけし館」

日本こけし館は宮城県大崎市鳴子温泉に所在するこけしに関する施設で、童話作家の深沢要が私蔵のこけし600点余りを町に寄贈したことにより誕生しました。館内には故高松宮親王や、陶芸家の溝口三郎、俳優の菅原文太寄贈のこけし展示を鑑賞できるほか、日替わりでこけし工人さんが実演をおこなったり、こけしの絵付けを体験することができる観光スポットでもあります。

日本こけし館の基本情報

日本こけし館の住所や営業時間をご紹介します。

  • 住所:〒989-6827 宮城県大崎市鳴子温泉尿前74−2
  • 問い合わせ先:0229833600
  • 営業時間:9時~17時
  • アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩で25分

他の有名なこけしを見るなら「みやぎ蔵王こけし館」(蔵王町伝統産業会館)

「みやぎ蔵王こけし館」があるのは、宮城県蔵王町にある遠刈田温泉(とおがったおんせん)のエリアです。

古くから湯治客(とうじきゃく)が行き交うこの温泉地はこけし発祥の地ともいわれており、このこけし館がつくられました。

全国の伝統こけし,木地玩具 を展示し,県別,系統別,工人別に わかりやすく展示されており、また、こけし工人による木轆轤の実演や遠刈田こけし販売コーナーもあります。

みやぎ蔵王こけし館の基本情報

みやぎ蔵王こけし館の住所や営業時間をご紹介します。

  • 住所: 〒989-0916 宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉新地西裏山36−135
  • 問い合わせ先: 0224-34-2385
  • 営業時間:9時~17時
  • アクセス:東北新幹線白石蔵王駅からバスで50分、東北自動車道白石ICから車で30分

こけしの取り扱い方・注意事項

職人が1つ1つ制作するこけしは、先述したとおり、乾燥した木を削り出し・漂白・研磨をして、絵付けをした後、何層にも塗装をし、仕上げています。
ただ自然の木材を使用しているため、水に弱かったり、紫外線を多く含む強い日光に長時間当たると、表面の絵付けが剥げたり、亀裂が生じるなどの破損の原因になりますので、塗れた時は乾いた布でよく水気を拭いてください。飾る際には直射日光の当たらない場所においてください。こけしは年月が経ちますと、表面が革製品のように色付いてきます。自然の木材の”味”になりますので、それも踏まえて”こけしライフ”をお楽しみください。

”こけし”に興味を持たれた方へおすすめの記事はこちらです。

鳴子こけしの記事はいかがでしたでしょうか。

宮城県の工芸品として一番有名なこけし、中でも鳴子こけしは、こけし発祥の地として有名です。

また宮城県や仙台に関連する記事として、こちらもご紹介させていただきます。

宮城県には他にも興味深い伝統文化や歴史、工芸品が残っており、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。

地方文化を盛り上げたい。

私ごとですが、地方文化や伝統工芸をもっと盛り上げたいと思っています。

いま日本の社会問題としてあげられる伝統産業の担い手不足や、地方からの若者流出、人口減少、限界集落問題などがあります。

たくさんの要素がかさなって、こういった社会問題が発生していますが、わたしは地方文化や伝統産業の魅力をもっと広報PRすることで、サポートしていきたいと考えています。

地域の人がみんなで守ってきた文化や風習、慣習。そこには優しい魅力があり、その魅力を発信して理解してもらうことが地域への愛着につながり、問題解決の小さな糸口になると考えおります。

みんな地方文化を盛り上げましょう!

ご覧いただきありがとうございました。

投稿者プロフィール

東叡庵
東叡庵煎茶講師/日本文化PRマーケター
宮城県出身。
仙台の大学卒業後、500年の歴史を誇る老舗和菓子屋に入社。京都にて文人趣味や煎茶道、生け花、民俗画を学び、日本文化への造詣を深める。和菓子屋での経験を活かし、その後、日本文化専門のマーケティング会社でブランディングとPRマーケティングに従事。現在はフリーランスの茶人として活動しながら、日本文化のPRサポートや「みんなの日本茶サロン」を主宰。伝統と現代を結びつける活動を通じて、日本文化の魅力を広めている。みんなの日本茶サロン編集長。